招集命令は突然に
あれは、5年前の11月のことでした。
淡々と職場で仕事をこなしていると、人事担当に呼び出されました。
何で俺が?別に悪いことしてないけど。。。
小さな会議室の机越しに向かい合い、お互いにソファーに座り込むと、担当から、いきなり次の一言がありました。
人事:Kan君、来年、〇〇(東南アジア某国)に行ってもらうから。期間は、3年間。
処分でも何でもなかっことたのにほっとするのと同時に、びびりました。
俺:オファーありがとうございます。でも、俺英語できないですよ。行っても貢献できない気が。。。
人事:みんなそう言うけど、何とかなるって。俺なんかいきなりアメリカだよ。
俺:でも、△さん(人事)はアメリカに留学しているから。。。
人事:留学の英語と仕事の英語って全然違うぞ。仕事の英語なんかやってりゃあ身につくって。
俺:でも・・・・。
人事:まあ、突然のお知らせでびっくりしてしまったと思うから、ちょっと考えてみて。
職場に戻り、物思いにふけりました。
国内で何年か激務が続いてて、気分転換に海外を希望し続けていたのは確かなんだよなあ。希望が受け入れられてよかったじゃん。
海外だと、確かに国内みたいに削られなさそうだけど、俺が英語できないっつうのが致命傷なんだよなあ。
ささいな業務が回せなくて、支店の業務が回らなくて、上司や同僚の信頼を損ねて途中帰国なんかしたら…
一旦は断る
思いは日に日にネガティブになっていき、1週間悩んだ末に、再び人事担当と面談しました。
僕:△さん、よく考えたのですが、やっぱり国内業務をしっかり勉強します。しっかり仕事ができるようになってから海外を考えます。今の僕が行ったって、現地の足を引っ張るだけだと思います。
ここで、僕の顔色を伺っていた人事から、内臓をえぐるような強烈なボディーブローが飛び出します。
人事:ふぅーん、お前、要するに英語が怖いんだろ(ニヤリ)!
僕:ぐぬぬ…。
人事:お前の気持ちも分からなくはないけど、できることばっかりやってるってつまんなくね?
僕:ギギギ…。
人事:お前は、自分が英語ができないと思っているが、かりにそうだとして、今回の海外話を断るとだ。お前は一生英語ができないで終わっちまうよ。お前の社会人人生それで楽しいか?
僕:た、確かに…。
人事:だったら、チャレンジしてみようぜ。英語が使えると、可能性広がるぞ。今俺が何言っても分かってくれないと思うけど、国内で普通に仕事できてりゃ、大丈夫だって。
僕:そ、そうかもしれないですね。
人事:じゃあ、どうする?
3分の沈黙の後、僕は重い口を開きました。
僕:じゃあ、行きます。行かせてください。
運命の歯車が回り始めました。
英会話の勉強ができない!
時はすでに12月。出国まで半年しかありません。
さあ、英語の勉強だ!
しかし、運命の歯車は廻り出したかもしれませんが、職場の歯車は絶賛逆回転中でした。
当時は職場のナンバー2。もろに中間管理職でした。
ナンバー1の課長があばれる君で、部下を詰め倒して職場の業務を止めまくり、職場のみならず周りの利害関係者に迷惑をかけながら、大混乱が続いていました。
年明けになって職場の英会話レッスンに出ていましたが、早速部下から待ったがかかります。
部下:Kanさん、もっと空気読んでくださいよ。みんなが大変なのにナンバー2が抜けるってやばくないっすか?
混乱が大きなトラブルに波及する中、レッスンは断念。
悲しい調整業務による深夜残業の日々が始まりました。
職場の研修を受けられなくなった僕の一縷の望みは、当時はやり始めたオンライン英会話でした。
しかし、平日夜はもちろんアウト、深夜帰りで疲れるため、早朝レッスンも無理。
土日はストレス解消のための飲みに費していたため、オンライン英会話の授業料は寄付金として消えていきました。
英語ができないまま海外に旅立つ
そうこうするうちに、4月になってしまいました。
出発まで、あと2か月。
ここまでくると、準備するだけで大変になります。
前任からの情報収集であったり、引っ越しの準備であったり、各種予防接種(東南アジアあるある)であったり、虫歯の治療であったり。
そんな僕がすがりついたのは、何だったのでしょうか。
そう、あの速読英単語。プライドは高かったので、上級編(笑)。
大嵐吹き荒れる職場で、ばれない様にパラパラめくって速読にトライ。
でも、文章と単語が難しすぎて1日1、2本しか文章が読めないのが人情。
かくして、6月某日。
英語を話すこととは程遠い状態で、某国に旅立ちました。
遠ざかる成田空港を見下ろしながら、不安で目に涙が溜まってしまったのはいうまでもありません。
【参考】
・僕が駐在のオファーにびびりまくっていた原因はこちら